2.講演内容
(1)4つの顔
山本氏は4つの顔を持っている。
1つ目は投資先企業の経営陣として経営に参画するハンズオン型外部投資家としての顔((株)クラシック・
キャピタル・コーポレーション代表取締役)。
2つ目は「ITを活用したデジタル・マーケティング」関連のシステムを開発するベンチャー企業を創業・経
営するアントレプレナーとしての顔((株)アール・ツー・イノベーション代表取締役)。
3つ目は、バイオ関連ベンチャーへの投資育成事業を行うベンチャー企業に投資するハンズオフ型外部投資
家としての顔((株)トランスサイエンス取締役)。
4つ目は、企業財務コンサルティングを行うコンサルタントとしての顔((株)コーポレート・キャピタル・
コンサルティング代表取締役)。
この4つの顔を使い分けている。このような中で、立場によって負うリスクに差があるにも関わらず、得ら
れるリターンに差がない事に疑問を感じるようになった。リスクに見合ったリターンを得ることのできる経
済社会にならないと優秀な人材が起業しない、という思いを持ち続けていたところ、それを理論化した研究
分野(アントレプレナー・ファイナンス)に出会った。
(2)アントレプレナー・ファイナンス
証券ポートフォリオのリスクには、個別リスクと市場リスクの2つがあり、合わせて総リスクと呼ばれる。
市場リスクから逃れることは出来ないが、個別リスクは分散投資によってほとんど取り除くことが出来る。
外部投資家の中でも、ハンズオフ型とハンズオン型では分散投資できる余地が異なる。
企業への関与度が高まるほど分散投資ができず、高い個別リスクを含む総リスクを負うことになる。
アントレプレナーは1つの事業に集中投資するため全面的に総リスクを負うことになる。
負うリスクが高く企業への関与度が高い者と、そうでない者が、同じ株価で株式を購入できてよいのか。
このような疑問を解決し、リスクをとったアントレプレナーが得られる価値の最大化を理論化した研究分野が
アントレプレナー・ファイナンスである。
アメリカではこの考え方に立ち、ディール・ストラクチャーをエレ ガントに設計できるベンチャー・キャピタリストが活躍している。日本の競争力指標をみると起業に関する事
項での順位の低さが目立つが、本当に低ければ、ソニー(株)や本田技研工業(株)といった企業は存在しないは
ずである。
問題は、リスクに報いる仕組みがビルトインされていないことにある。
この問題が解決出来れば優 秀な人材が起業をし、世界を代表するような企業が生まれてくるはずである。かつて、日本は、アメリカのQC
理論を学び、高品質な製品を作る事が出来るようになった。これと同様に、日本は今、アメリカからアントレ
プレナー・ファイナンスを学ぶべきである。
3. 記録担当者の感想
リスクに見合ったリターン設計をする、と言われてみれば誰もが納得できる概念を、実例を交えつつ理論的に、かつ、わかりやすく説明して頂いた。日本におけるベンチャー創出のための重要な示唆でもあるし、各人が身に付けて実践すべきことでもあろうとの思いを強く持った。また、山本氏ご自身が、負うリスクが最も大きいアントレプレナーとしての顔を持ち、同時にベンチャー・キャピタリストなど他の顔も持ちながら分散投資を行っておられることは非常に興味深かった。
記録担当院生 大平昌幸、坂本寛
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