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2003年度(2003.4~2004.3) ワークショップ講演
■第1回ワークショップ(2003年4月10日開催)
●ゲストスピーカー:ネクストウエア(株) 代表取締役社長 豊田 崇克氏
タイトル : 「すべてに公開しよう!」
キーワード : ナスダック・ジャパン、株式公開、ベンチャーキャピタル、データベース、訪問看護支援システム
1.ゲストスピーカーの概要
豊田氏は、2000年12月ナスダック・ジャパン(現大証ヘラクレス)に株式公開を達成した ネクストウエア(株)の社長である。現在39歳。 同社はデータベースをもとにしたシステム開発やSE・プログラマーの派遣を行ってきており、 現在は在宅看護支援システムやWeb利用によるPOSシステムの開発・販売に取り組んでいる。

プレゼンテーションをする豊田社長
2.講演内容--ネクストウエア(株)を取り巻く環境の変化とその対応--
(1)設立の経緯と資金調達の苦労
豊田社長は高校卒業後、もともとサラリーマンとして日本エス・イー(株)(世界初のPC上のデータベース・ソフトの日本での総代理店。その他、データベース・ナレッジシステムの国内総代理店の権利を当時多く保有していた。この権利の獲得交渉も豊田社長が多く担当し、当時、シリコンバレーにはよく行っていた。)という会社に勤めており、当時の同社社長から関西で会社を作って来いと言われ、ネクストウエア㈱の前身である関西日本エス・イー(株)を設立したというやや特殊な設立経緯を持っている。
最初は中古で机や椅子を安く購入し、大阪の小さな事務所にてスタートした。
当時は3年間赤字が続いている部門は社内M&Aの対象とされるとの風土があり、豊田社長はトヨタ自動車を顧客として獲得したいとの思いから不採算だった名古屋営業所も買収した(なお、現在ではトヨタ関連企業がネクストウエア(株)の主要顧客となっている)。
売れるモノを持っていたことと強力な営業力で、当初は業績も順調に推移した。
その後、親会社の多角化戦略により、当社は急激に資金不足に陥った。
すなわち、SE会社にとって原価は人件費であり、納品してから入金するまでの人件費をまかなう必要があり、毎月10日ごとに20百万円資金ショートする状態となった。
資金繰りに追われる日々が続いたが、同氏は絶対失敗しないとの強い信念のもと、自らの資産で資本金40百万円に増資し、親会社との資本解消を行う一方、初めは間接金融を頼り遠方の地方銀行にもコンタクトしたが、銀行はなかなか若い人にはお金を貸してくれず、苦労した。
この間、社名もネクストウエア(株)と改名し永続する繁栄を誓った。
そして、ベンチャーキャピタル(VC)というものの存在を知り、直接金融での資金調達に活路を見出した。東京海上火災保険に飛び込みで出資依頼に行った際、京都にフューチャーベンチャーキャピタル㈱(FVC)という新しいVCが設立されたことを聞き、FVCと東京海上から出資を受け、その後はVCからの調達を先行させて、財務を安定させた上で銀行借入を増やすという戦略をとった。
VCとは付き合ってよかったと思っており、いろいろ学ばせてもらった。ただし、VCの言うことを全部信用しなかったこともよかった(やはり、資本政策は自分で考えないといけない)。
(2)経営理念、組織作り、人材採用
経営理念・方針を作ること、すなわち、自分たちがなんのためにその仕事をやっているのかを明確にすることは重要なことと考えている。
当社では、顧客基点のサービスを遂行して社会に貢献するという理念、そしてノウハウの蓄積をしていくため下請けはしないという方針を作った。
また、株式公開に向けて急成長するには組織作りが不可欠である。
当社では、住友金属で長年財務を担当してきた人材を取締役(現副社長)として迎え入れ、銀行・VCとの対応、社内規定の整備等を行った(豊田社長は常にほしい人材のリストを持っておりその獲得に努力しているとのこと)。 さらには、人材の採用に際しては、個々人がどのような見返りを期待しているのかを見極めることが重要である。
お金の見返り(マネー・リターン)だけを求める人は当社には合わず、実際早期に退社していっている。当社で働くことによって得られる知識習得(ナレッジ・リターン)や人脈構築(リレーション・リターン)、具体的な実績を作ることにより得られる評価(ブランド・リターン)、そして人間としての成長(グロース・リターン)などを会社は提供することが重要で、それらを求める優秀な人材を多く獲得したいと考えている。
当社は独自の報酬システムとして「ニーズ給制度」(世の中のニーズにどれだけ応えているかで給料を決める制度。
ニーズにいかに応えているかの自己アピールも必要)を採用している。これにより社員は自発的に学習し能力を高めないと生き残れないが、そういった各社員の努力が当社を支えている。
(3)過去・現状の否定と徹底した顧客基点による事業展開
豊田社長は会社の状態が安定成長期だとは思っておらず、自分たちがやっていることを常に否定することが新しい発想や事業展開のためには重要であると考えている。
当社は顧客の立場に立って「本当に何が必要であるか」を大きな流れの中で捉え、企画提案しており、実際に顧客のビジネス・フローを変えていっている。従来のシステム会社側の論理が優先されるアウトソーシングではなく、あくまでも顧客基点を重視するウェア・コンサルティングやインハウス型及びオンサイト型のシステム・アウトソーシングで新たなビジネスを構築している。
今後は経営戦略システムまでも提案できる会社になりたい。
現在は今までのノウハウを活かし訪問看護支援システムの開発・販売に注力する他(http://www.nextwellness.jp)、インターネット利用によるPOSシステム(1日遅れでデータ把握ができる従来のPOSとは違い、各店舗でデータをWeb上で入力するため何処にいても即座に商品別販売状況が把握できるシステム)によりリアルタイム経営の実現に寄与している。ビジネスにおいては、世の中の求めていることを察知し、過去や今やっていることを否定して常に先を見ることが大切であると考えている。
3、豊田社長の根底に流れる価値観
(1) 絶対に失敗しないという信念と諦めない強い意志力。
これにより、苦難・危機はコントロールできる。
(2) 過去を否定し続けること。
これにより、成功体験を忘れることができる。
(3) 常に変化すること。
これにより、常に新しいことを創造できる。
(4) クイック・アクションを心がけ、約束は必ず果たすこと。
これにより、先を読みかつ信頼を生むことができる。
4、豊田社長の経営理念を重要する姿勢
豊田社長は経営理念の重要性について、次のように述べられた。
会社経営において、経営理念は最重要であり、「社是社訓の無い会社に入るな」と言いたい。
経営理念こそが目標でありビジョンであり社員の意思統一の重要な道具である。
これは万国共通で、私はシリコンバレーで学んだ(日本エス・イー(株)時代にデータベース技術の権利獲得のために滞在)。
優良企業には素晴らしい経営理念があり、人を動かせる力がある。
当社も株式公開前にはスローガンの「すべてに公開しよう!」を会議の前に唱和したし、黄色ののぼり旗も作って社内に立てた。
これからも経営理念・方針を大きな声で叫べる会社でありたい。

豊田社長を囲んで集合写真
5、大阪のメリットとデメリット(学生からの質問に対する豊田社長のコメント)
起業・会社経営を考えた場合、やはり大阪はデメリットが多いかもしれない。
何より金融機関が東京に集中しており、まず新幹線に乗るというアクションが必用である。
しかし、フロンティア精神の面ではもっと自信を持ってよいのではないか。
また、頭を下げられる大阪人の気質は強みである。
以上
記録担当院生 宮内敏彦・岡田耕治
