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2005年度(2005.4~2006.3) ワークショップ講演
■第8回ワークショップ(2005年12月1日開催)
●ゲストスピーカー: サムコ(株) 代表取締役社長 辻 理 氏
タイトル:「ガレージ内起業から株式公開まで」
1.辻 理 氏の略歴
1942年生まれ。立命館大学理工学部卒業。分析機器メーカー入社と同時に京都大学薬学部(有機微量分析・低温プラズマ化学に関する研究)へ出向。その後、米国NASAエームス研究所研究員を経て、㈱サムコインターナショナル研究所設立。京都大学などの非常勤講師、中小企業庁技術評価委員、京都市ベンチャービジネス目利き委員会委員などを歴任。現在の研究テーマは、プラズマ材料科学、MOT実践論など。
2.サムコ(株)の概要 【http://www.samco.co.jp】
1979年京都市伏見区の寺田屋近くのガレージで創業。現本社は同区の京セラ本社の正面に位置。薄膜技術を用いた半導体など電子部品製造装置の製造販売を柱に高収益な国際ハイテクベンチャー企業として有名。2001年 株式公開達成。米国シリコンバレーと英国ケンブリッジに研究所を有する。2004年末現在 資本金12億円、年間売上高34億円、従業員数115人。
3.講演内容
●ハイテクベンチャー企業へ
自らを「技術屋」と自認される辻社長であるが、NASAのエームス研究所から帰国し暫くして脱サラの道へ。まず手掛けたのがフランスのお酒アルマニャックの輸入販売、次いで学習塾の経営。しかしどちらも本格的事業化には至らず早々と見切りをつけることに。
そうこうしているうち一本の電話があった。電話の相手は大手家電メーカーに勤務する旧友、「新事業のソーラーセル関連の設備製造を手伝ってくれないか」という内容であった。
NASA時代には宇宙空間での物質のリサイクルを研究するなど、薄膜の形成技術に関しては技術・知識面での蓄積があった。相談を受けた設備は、アモルファスシリコン薄膜を形成するための製造装置であったが、「プラズマの中で新しい物質を創成する」ノウハウをベースに、グロー放電を利用したシリコンと水素の化合物による薄膜形成装置が完成するに至った。このことをきっかけに、同社は独自の薄膜形成技術をコアに成長軌道に乗ることになる。
●ガレージ内での起業と独自の戦略
創業後、最初の仕事は貸ガレージ2台分のスペース(家賃月額12,000円)をL字型に仕切った作業場づくりで、まさに国内版「ガレージカンパニー」そのものであった。
ところで、シリコン薄膜は市場規模が大きいものの厳しい競争に晒される領域である。そこで同社は、自社が勝負できる領域として、ニッチ市場で且つ高い技術力を要する化合物半導体(ガリウム、砒素、窒化ガリウムなど)に着目し大手企業との差別化を図る戦略をとった。

ご講演中の辻社長
●足りないものを補うために
当時は人、モノ、金すべてに乏しかった同社であったが、定期的に外部講師を招き技術セミナーを開催していた。会場は融資先である都銀の会議室(使用料無料)で、このことは「銀行がバックにいるという」取引先からの信用イメージを得る上で意外な効果があった。また、設備面の乏しさを補うため京都大学の研究室と共同研究を行い、(教授などと連名で)国際学会向けの論文発表を行ったことで対外国企業向けの信用力が飛躍的に高まった。結果、米国大手企業からの受注を得ることとなり、以後、保守的な国内企業からも注文が舞い込むようになった。
●京都発グローバルベンチャー企業へ
創業当時は「技術屋」の辻社長自ら商工会議所へ経理の勉強に通うなど、色々とご苦労があったようである。ただ、経営面における広く深い知的蓄積(自己教育)がなされたことが、利益計画を重視した同社の経営の強固なベースとなっている。市場に乏しい京都のベンチャー企業は景気に左右されにくい高収益体質で有名であるが、同社も例外ではなく、高い自己資本にこだわり、粗利率50%以上を維持している。まさにシンプルな目標設定とその達成こそが同社の強みである。
現在、海外の米国シリコンバレー、英国ケンブリッジに研究所を有しているが、後者の研究成果は米国企業にライセンス供与されるなど実際の成果も出始めている。創業後21年で株式公開を達成したハイテクベンチャー企業、サムコ㈱にとってグローバルな新市場の拡大まだまだ緒についたばかりである。
●記録担当者の感想
「経営のポイントは、市場のポジショニングと利益計画」と述べられた辻社長。創業当初は「ガレージ」に寝泊りされ企業の基礎づくりに励まれたそうです。当時を振り返って「楽しくて、悲壮感はなかった」とのお答えながら、「実際は、お金の苦労はした方が・・」というアドバイスをいただきました。「技術屋」から「経営者」への脱皮にあたり、色々と「自己研鑚」されて現在の地位を築かれた創業社長から発せられた言葉に何とも言えない重みと説得力を感じました。温和な表情ながら、まさしく京都のベンチャー経営者を代表されるお一人らしく熱意と戦略的センスの良さを感じられるお話しでした。

辻社長を囲んで
以上
記録担当院生 山下 修・小山壽一
