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2005年度(2005.4~2006.3) ワークショップ講演
■第11回ワークショップ(2005年6月23日開催)
●ゲストスピーカー:(株)メガチップス 会長 進藤 晶弘 氏
タイトル:「企業家は、一種のアーチスト - 研究開発型ファブレス・ハイテクベンチャー(株)メガチップスの経営原則」
1.進藤 晶弘 氏の略歴
愛媛大学工学部工業化学科卒業。三菱電機(株)、(株)リコーを経て、1990年 (株)メガチップス、1998年 (株)ビジュアルコミュニケーション((株)メガフュージョン)を創業、ともに上場企業にまで育てる。
2003年より当大学院創造都市研究科教授として「起業と経営理念」「組織経営論」等を担当。
2.(株)メガチップスの概要(http://www.megachips.co.jp)
資本金48億4,031万円、従業員数175名
売上高(連結)301億2,239万円 (2005年3月期)
事業内容(事業会社による)
(1)システムLSIの企画、開発、生産(外部委託による)、販売
(2)業務用セキュリティ・モニタリング分野の映像記録・伝送機器、コンシューマー用途のコミュニケーション機器などの開発、販売
3.講演内容
●(株)メガチップス創業
幼い頃、大病を患った晶弘少年は郷里愛媛の緑に囲まれて育ち、やがて出来たばかりの愛媛大学工学部工業化学科の門を叩く。卒業後は三菱電機(株)で新規事業部門に配属されるがこれがあえなく解散。失意の中ミノルタへの出向の後、戻ってきた半導体部門で頭角を現すことになる。その後は(株)リコーへと転進し半導体事業部をゼロから立ち上げ年商400億円の規模にまで成長させる。
常に先例のない中、半導体製造に携わってきた進藤氏は徐々に日本の電子産業の体質すなわち「DRAM依存」、「生産力重視」、「大企業絶対主義」に関して疑問を抱くようになる。「これからはベンチャー企業の時代」、「システムLSIの時代が来る」と確信する進藤氏は会社に進言するものの意見は受け入れられず自然な流れとして(株)リコーを去ることになる。わが国初の研究開発型ファブレス・ハイテクベンチャー企業(株)メガチップスの出発点である。
同社はシリコンバレー型の経営スタンスのもと、個々のユーザー適合型のLSIの研究開発(アルゴリズム開発、アーキテクチャー開発・回路設計)に経営資源を集中させ、生産は外部に委ねる体制をとっている。この「選択と集中」型のビジネスモデルこそが(株)メガチップスの「経営の基本」であり他社に対する比較優位を築くベースとなっている。
●経営危機の克服と経営原則
創業当初は銀行口座の開設すら困難で、各市の公民館をオフィス代わりに転々とする毎日であった同社であったが徐々に受託開発も増加し成長軌道に乗ると思われた矢先、いわゆる「バブル崩壊」の直撃を受ける。受注が激減したことに加え、元の勤務先企業から受けた妨害、敵対的行動によって社内に動揺が広がり大きな経営危機の中、従業員の意見は大きく二つに分かれた。一つはその会社からの資本受け入れ(事実上の吸収)を承諾することであり、もう一つは自主独立で経営を立て直そうという意見であった。
そこで、進藤氏以下全社員が有馬温泉の旅館に籠り話し合うことで結論を出すことになった。その際、進藤氏が取ったのは「動揺を見せない」、「自分の価値観・意見を押し付けない」、「社員間の正面の対立を避ける」、「自己責任で判断させる」という姿勢で、長時間の検討を経て同社の『経営理念』、『行動指針(信条)』、『経営原則』が明文化されるに至った。
この結果、同社の判断の究極のよりどころとしての『経営原則』すなわち「会社の発展と社員の幸せの一致を図り、自主独立で発展する」ことが最終確認され、結果として3、4名の退社を見たものの残る全社員の価値観が統一でき危機を乗り切る原動力となった。
(株)メガチップスの『経営理念』
「革新」により社業の発展を図り、
「信頼」により顧客との共存を維持し、
「創造」により社会に貢献する存在でありたい。
『行動指針(信条)』
1. 顧客・パートナーを大切にし、強い信頼関係を築く。
2. 起業家精神を持ち続け、衆知を集め総合力を発揮する。
3. 創造性と革新を重視し、新しいものに挑戦し続ける。
4. 自主性を重視し、建設的な失敗を許容する。
5. タイムリーに決断し、スピーディーに実行する。
6. 常に先を見て、機転と知恵でベストを尽くす。
『経営原則(究極の判断のよりどころ)』
1. 会社の発展と社員の幸せの一致を図る。
2. 自主独立で発展する。
●経営の基本方針
同社では経営の基本方針として、財務では「守りの経営」、営業・開発は「攻めの経営」、そして「人材の活用」を強く意識している。財務的には、無借金経営のもと外部からの借入金、出資金に頼らず、事業スピードを上げることによるキャッシュ・フローを重視した経営スタイルである。株式公開によって大幅に財務体質は改善されたが、内部留保の厚さに関しては本業への研究開発投資のみを意図して蓄えられている。
一方、人材の活用については「民主的な運営」をルールに「人材中心の経営」が志向され、「議論重視」、「失敗を責めない」、「能力主義と年功主義の融合」などの基本が尊重されている。
経営の安定化に伴う「大企業病」対策としては(株)メガチップスを持ち株会社に事業グループを再編し顕在化した問題を解決するととともに、「新しいメガチップス像」を築き再成長路線に乗せる過程にある。
なお、起業家としての進藤氏自らは、「オーナーから株主への脱皮」意図し、全ての役職を辞し創業者(ファウンダー)として同社の成長を見守る立場にいる。

スクリーンを背に講演中の進藤会長
●記録担当者の感想
「人生の意義は挑戦すること」と説かれる進藤会長、日本初の研究開発型ファブレス・ハイテクベンチャーとして同社を起業、成長に導いた背景には尊敬する坂本竜馬の生き方が色濃く投影されている。
「衆人、皆善を為さば、我一人悪を為せ。天下のことみなしかり」 人まねをせず、自分が正しいと思うことをやり遂げる信念、挑戦心こそが「進藤流経営の真髄」である。
「他社と違ったことをやる」「事業体質や業務を『改革』し続ける」 同社の経営の基本理念はまさしく進藤会長の生きざまそのものと言える。
起業家(アントレプレナー)の中の起業家として賞賛される存在、そんな「進藤先生」の志、考え方にいつも(学内で)身近で接することができる我々は本当に恵まれた環境にいる。

自らの『志』を熱く語られる進藤会長
以上
記録担当院生 畠山光夫、小山壽一
