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2007年度(2007.4~2008.3) ワークショップ講演
■第12回ワークショップ(2007年7月5日開催)
●ゲストスピーカー:みずほキャピタル(株)投資第1部
シニアインベストメントマネージャー 横田 秀和氏
タイトル:ベンチャー企業における資本調達とIPO
はじめに
「ベンチャー企業における資本調達とIPO」は、ベンチャー企業の経営者を目指すためには理解しておきたい知識だと考える。そこで資本調達の方法や IPOの本来の目的を理解するため、ベンチャーキャピタルのお立場である横田秀和講師の講話をお聴きした。
講師について
早稲田大学法学部卒業。富士銀行(現みずほ銀行)へ入行、ソフトバンク㈱へ出向後、ソフトバンク・インベストメント(現SBIホールディング)を経て、2001年みずほキャピタル㈱に入社されている。
講話内容
・ベンチャーキャピタル(VC)とは
株式公開(IPO)を展望するベンチャー企業や中堅・中小企業に対し、出資などにより事業資金を供給すると共に、各種経営支援により公開をサポートし、IPO後に市場で株式を売却してキャピタルゲイン獲得を図る投資会社のことである。
・ベンチャーキャピタルの業務内容
実際の業務の内容は以下の通りである。
資金の提供
資本政策の立案・推進
企業同士のアライアンスのアレンジ
専門機関の活用
経営上の戦略的アドバイス
・ベンチャーキャピタルの分類と特徴
ベンチャーキャピタルは国内で約300社あり、分類してみると銀行系、証券系、生損保系、独立系、事業会社系などがあり、最近活発になっているのは事業会社系である。また二極化する傾向があり上位10社で投資残高、年間投資額とも約7割を占めると言われている。
・ベンチャーキャピタルの投資のスタイル
投資スタイルにはハンズオン形式とハンズオフ形式がある。ハンズオンは経営面に積極的に関与していき、アーリーステージから株のシェアをとってやっていく。ハンズオフはレガシーのベンチャーキャピタルに多く、分散投資のスタイルで、投資後は経営にも関与しない傾向がある。ミドルからレイターステージの投資先が対象となっている。
・ベンチャーキャピタルの投資動向
2000年には約4,000億投資し、俗にITバブルと言われており、積極的に投資を行った時期であった。2001年から2004年までは2,000億程度で推移してきたが、2005年から再び投資額が増えてきた。2006年に4,131億円になり、ITバブルに近い形で回復してきた。ただ投資先はIT 以外に外食などにも投資が増えてきいおり、逆にバイオは激減してきている。
また最近では新興市場の株価が低迷しており、投資パフォーマンスが出にくくなっている。残念ながら上場後に投資家を裏切るような事例が多くなってきおり、その影響で上場審査が厳しくなってきている。2007年度は上期で前年同期と比較して20%新規上場企業数が減ってきている。
・日米のベンチャーキャピタルの違い
米国シリコンバレーのベンチャーキャピタルはシードから積極的に投資を行っており、ハイリスク・ハイリターンとなっている。最近の事例としてはシリコンバレーでは著名なSequoiaがYouTubeで約600億円での投資リターンを得た。また、ベンチャーキャピタルから役員が派遣されていることが多く、早いタイミングで出資するためマイルストーンで段階的に出資する傾向がある。なお、マイルストーンに到達できなければドライにサポートを終了することが多い。
規模は1ベンチャーキャピタルで2,000億円から3,000億円くらいのファンド運用を行っており、優先株に代表される種類株も多く利用している。
日本のベンチャーキャピタルでは分散投資となっていることもあり、ベンチャーキャピタルの持ち株比率は低く、シェアに比例して発言権があるため、低いシェアでは積極的に経営には参画しにくい。種類株などの利用もまだ少なくこれからになっている。
ファンド規模は大きいところでも1,000億円程度となっている。
・ベンチャー企業の成長と資金調達のイメージ
IPOした後の成長をどのようにするかが、実は大事なポイントになっているので、ここを理解して欲しい。
・資金調達のタイミングと方法
アメリカではエンジェルとベンチャーキャピタルが出資して、一気に成長するが、日本では自己資金か国からの助成金、銀行等からの借入金でまかなう所からはじめるのが大きく違っている。
・株式公開=IPOとは
証券市場に自社の株式を公開することにより、一般投資家が市場で売買を開始することである。公募増資を行う時にはPOとなる。
なお、IPOはゴールではなく、新たな出発点であり成長ドライバーにすぎない。
IPOまではウォーミングアップ期間であり、IPO後はここからが本番となる。ただ一部の企業は残念ながらIPOで達成感を得てしまったり、横道にそれたり、事業がおろそかになったりすることもある。
新聞でも報じられているがIPO後に計画どおりに実績が出せない会社がでてきて、IPO前とまったく異なる事業を行ったり、いろいろな事業会社やファンドから投資を受け、当時の経営陣がウォッシュアウトされて、単なる投資会社に変わってしまうこともある。
証券取引所では上場会社の退場ルールを明確にしていこうという流れがあり、年末あたりから本格的な議論が行なわれていくであろう。
・ベンチャー企業にとっての株式公開の意義
上場会社になって、企業情報の開示を行うことで銀行からの融資がしやすくなったり、市場からの公募増資による資金調達で財務体質の改善も可能になる。また上場会社になると新聞にもでてくる機会が増え、知名度も向上し優秀な人材の確保も意外とできるようになる。
また業績の開示が公になり、社員のモティベーションも向上し士気も上がる。さらにIPOの課程で内部管理体制も飛躍的に充実するため、管理面についても盤石な体制になる。
デメリットとしては、四半期ごとの開示がルールになっており、経営内容の発信を行う必要が出てくるため、管理コストが増加する。
また、アクティビスト(物言う株主)に対する対応を行う必要があり、色々な株主への説明責任を果たせるようにしなければならない。また確実な成長へのコミットメントが必要で、提示した経営計画と実績との間に乖離があるとストップ安が続くケースがあるなど、市場が敏感に反応することもある。
さらに、四半期ごとの開示により、経営の短期化により意識が集中しがちとなり、株主からの5年などの中長期の単位での評価がされにくい。また投資家向け説明会を年2回開催する必要があったり、有価証券報告書といった法定開示資料の提出も必要になる。
上場費用はIPOの規模にもよるが3,000万円から5,000万円くらいはかかる。上場後の上場維持費用もかかってくる。
・ベンチャーキャピタルの投資決定プロセス
デューディリを行い、また競合やマネージメントチームなども評価し、IPOを含めてその後の成長の見込みがあるかを見極める。
投資審査会で投資の是非を含めて投資金額、シェア、マイルストーンなどを決定する。取締役の派遣、または取締役会へのオブザーバーの派遣などの取り決めも行う。
・ベンチャー企業評価の視点
例えば、メーカ系の場合には特許、周辺特許などの調査を行い、製品やサービスの特長も分析し、競合やマーケットの成長・成熟度合いなども見ていく。
事業計画の販売価格の妥当性や、原価の正当性、コンペジターとの競争力を検証し、数値計画の実現可能性を検証していく。
さらに、マネージメントチームの「ひと」についても時間をかけて評価をしていく。
・投資審査のポイント
事業計画の妥当性や株式公開の蓋然性に着目する。公開の蓋然性では、ネット広告会社の場合には、広告の大半が出会い系の広告であったり、コミュニティサービス会社でも、実態は出会い系であったりする場合には、どんなに売上や利益が出ていても公開会社としてふさわしくないと判断し投資を見送ることもある。
また、公開確度が高くても、株価が高く投資採算が低いと判断されれば、投資を見送ることもある。
以上
文責:田中実・上野亮
