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大阪市立大学大学院 創造都市研科

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2008年度(2008.4~2009.3) ワークショップ講演

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■第03回ワークショップ(2008年4月24日開催)

●ゲストスピーカー:(株)ルネサステクノロジ 相談役 長澤 紘一氏

タイトル:日本の製造業の最近の動向とベンチャー企業の存在意義

講師略歴
東京都生まれ。京都大学大学院理学研究科化学専攻博士課程修了、三菱電機(株)入社、メモリ事業統括部長、取締役半導体事業本部長等を経て、同社専務取締役、半導体事業本部長。(株)日立製作所と三菱電機(株)により(株)ルネサステクノロジ設立、同社会長&CEO。2005年4月より同社相談役(現職)

講演内容
1.現在のエレクトロニクス関連産業の概観
(1)IT関連産業、特に電子材料、半導体をベースとするエレクトロクスが日本経済を牽引してきた。
(2)経済全般のグローバル化が顕著である。また地球温暖化などの新しい問題も顕在化してきている。

2.最近のエレクトロニクス産業の変化
(1)日本の物作りは電子機器分野などで危機を迎えている。
   電子機器分野でもの作りの構造変化が進んだためである。
(2)日本の経営風土が世界の競争にマッチするもの、マッチしないものがある。
(3)世界のものつくりの構造変化をよく見るとともに日本の風土に合った事業の展開を今後行うべきである。

<詳細内容>
1. エレクトロニクス産業の分類と概況
エレクトロニクス産業は次の3つに分類される
(1)川上/電子材料  例、信越半導体、チッソ、旭硝子、等
(2)半導体、電子部品  例 ルネサステクノロジ、東芝、NEC、ローム、京セラ、
(3)川下/電子機器セット 例、ソニー、松下、日立、東芝、三菱電機、等
  (1)、(2)はせいぜい付加価値ベースで5兆円の事業分野だが最終製品の電子機器やコンテンツを生み出しエレクトロニクス関連分野として約80兆円のGDPに貢献している。またその恩恵を受ける産業、たとえば金融、輸送、等が約200兆円とも言われている。
  グローバルな視点でこのエレクトロニクス産業を見ると、川上ほどシェアも収益性も高い。川下ではたとえばテレビでは30年前の世界シェア70%がいまや25%ぐらいまで落ちてきている。また半導体も50%超のシェアが20%まで落ち込んできている。TVなどのセット分野では日本は国内での競争力は強いものの後発国で使用される普及型TVで競争力がなくグローバルな展開についていけていないのが現状である。
  結果としてセット分野の収益性は2~3%であり、これが総合電機の収益性や市場での立場を大きく低下させている。たとえば製造業収益ランキングを見ると、80年代の5位(7%)から2006年の15位(2~3%)である。

2.川下/電子機器でのものつくりの構造変化
  デジタルカメラ、液晶テレビ、DVDなど日本人のこだわりが情報家電分野で新製品を次々と生み出してきた。しかしこのような製品の導入期では日本のシェアは高いが普及期では後発国に追い上げられてしまい価格競争でついていけずに収益を落とすことが顕著になっているのが現状である。
  もう少しこれを分析すると、導入期では日本人独特のものつくりのコツ、勘が必要な工程を含んで開始されるので後発国は追随しにくい。しかしこれがやがて半導体や電子部品で構成される機能ブロック、いわゆるモジュール、を寄せ集めて作れるようになる。この時点になるとこういった製品は人件費の安い後発国で作られてしまい日本は競争力をなくすのである。
  「白物→TV→PC」を例に取りモジュール化が進む背景を見てみる。
  モジュラー化は半導体が大きな影響を与えている。機器を制御する部品の中心にマイクロコンピュータ(マイコン)がある。マイコンは1980年代の1MIPSレベルから現在10000MIPS(MIPSは情報処理量の単位)まで性能を飛躍的に上げてきている。これにともない、小さなチップが白物家電レベルの制御からパソコン、携帯電話まで沢山のデータを扱うことが可能になってきている。自動車産業でも多くの半導体が使われ始めていて安全運転、快適走行に役立っていることは衆知である。しかしマイコンの処理能力向上は機器内部のデータの制御にとどまらない。製造工程での部品のばらつきや難しい調整をも吸収してしまうことになってきている。このマイコンで作られた機能ブロック、いわゆるモジュール、があるとこれを組み立てるだけでTVやパソコン、DVDが作られてしまう。そうなれば日本人の器用さなど要らなくなり、ものつくりの現場は後発国に行くのである。
  こういった構造変化をパソコンで見てみよう。最初はIBMが材料からCPU,ソフト、組み立てなど全部自分でやっていた。その後半導体技術の進歩とともにCPUはインテル、ソフトはマイクロソフト、組み立てはアジアに行ってしまい結局IBMは数年前にパソコンから撤退した。
  このようなもの作りの大きな構造変化が電子機器分野の世界で起こっているのである。

3.半導体でのものつくりの構造変化
  半導体では1995年頃まではIDM(Integrated Device Manufacturer, マーケティング、設計、製造まで一貫して行う垂直統合型半導体メーカ、日本の総合電機の半導体部門やNEC,ルネサス、米のTI,欧のインフィニオンなどがこれに相当)が事業を牽引してきた。しかし過去10年でマーケティング/設計だけやるファブレス会社、製造だけやるファウンドリ会社、に分かれて物を作る姿が台頭してきている。いわゆる製造工程の垂直から水平への構造変化である。この新しい組み合わせは半導体のある製品分野(たとえばASSP分野)ではより早く、より効率よく物を作り出せるのである。ここでいうASSP(Application Specific Standard Products)半導体とはたとえばテレビを作りたい会社ならどこでも使える業界共通仕様の普遍的な半導体である。
  もちろんASSPではない顧客特化型のマイコン、アナログといった製品は上記のIDMが適している。しかし一般的に電子機器(セット)はマーケットがグローバル化してきているのでASSPは顧客特化型よりコストが下げられ有利となりつつある。
  そんな背景で伸びるASSPを国外のファブレスにとられてしまう状況が日本の半導体にとっての苦戦の原因になっている。では日本でファブレスは成功しないのか?という指摘もあろうかと思うがファブレス会社の運営は、たとえば短期に最高の技術屋を集めることで成り立っているので日本の雇用の姿とは一線を画していてなかなか困難である。
  結局、日本の半導体の生きる道は上記のようなアナログ、マイコンのように長い経験を要る分野を土台に巻き返すのが道だと思う。また環境やエネルギー分野での半導体は大きく伸びるのでこのマーケットに精通することである。もちろんASSP製品をファブレス的にやっていくこともあきらめることはないがやる以上相当欧米的な運営をする必要に迫られる。

4.電子材料分が何故強いのか
  戦後日本の成長はナイロン、ビニロンなどの化学繊維・化学工業で始まりその後この種の技術は工業用分野に、たとえば東レはナイロンなどから工業用カーボン材料に、信越化学は化学製品の上にシリコン材料に、というようによりハイグレードな事業へと進化を遂げてきた。結果として欧米との戦いでかなりの分野で寡占体制を占めるにいたっている。かなりの材料分野で寡占体制を占めるに到った背景は、日本の会社風土、すなわち年功序列のような社員重視の会社運営がエンジニアにある目標に向かって粘り強い開発努力を許し、その結果としてすばらしい材料の改良をものにしたことである。加えてこの30年日本には強い半導体と液晶技術、そしてデジタル情報家電が存在してきた。電子材料は上述した戦後から続いてきた強い化学材料技術が強いエレクトロニクス技術に引っ張られ大きく花開いたのである。
  後発国もこの電子材料強化を目指しているが、後発国の欧米的会社運営、あるいは未熟な、また裾野の狭い科学インフラでは簡単に追いつけないのが実態である。それゆえ、この分野での日本の優位は続こう。

5.今後の日本が進むべきもの作りの方向
  (ア)IT分野では
  *後発国向けモジュール化供給に特化したもの作り
  *長い生産経験が要る、摺りあわせ型の電子部品や半導体
  *作り方を完全にブラックボックスに出来るもの作り
    (これはなかなか簡単でない)
  *ファブレスのように欧米的な運営の要求される分野に出る場合は
     徹底的な欧米的運営で応える
  (イ)広くは
   技術が今後とも大きく進歩していくがその技術の改良には
   広大で強い技術のインフラが必要な分野でのもの作り、
   たとえば 素材、電子材料、ロボット、自動車、電装品、
   環境/エネルギー(電池、CO2封じ込め技術)、医療機器、等

6.ベンチャビジネスとの関連
(ア)こういった大きな構造変化を良く知っておいたほうがいい
(イ)売り上げの上がりそうなビジネスは多くあるが日本の雇用風土も加味した会社運営を無視できないであろう。
(ウ)長い経験の蓄積型は結果を出すのに金と時間がかかるのでベンチャーにとって不適であろう
(エ)上記のファブレスタイプに類似した事業がいくつか考えられると思うが、このような事業では小粒の優秀なメンバーによる欧米的スリム化した運営が出来るのでベンチャーにとって大きな機会がある。
(オ)マーケットはグローバル化している。それ故、ベンチャーにとって過去にニッチとしていたものが大きな規模で展開できる。したがって昔に比べてベンチャーにとって可能性が広がっている。
(カ)確立した総合電機メーカが一点突破を狙う専業の新興会社に対して苦戦している。今の時代にはベンチャはある事業に狙いをつければ大きな敵でも勝つことが出来る。
(キ)日本でも「借入金なし」で起業できる資金調達環境が金融のグローバル化とともに開けてきている。ベンチャーもビジネスモデルがよければお金は集る。


講義後アントレ分野学生に囲まれた長澤講師

以上


文責:小園・曽我部・長澤

 

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