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大阪市立大学大学院 創造都市研科

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2009年度(2009.4~2010.3) ワークショップ講演

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■第04回ワークショップ(2009年4月30日開催)

●ゲストスピーカー: 太成学院大学 経営学部 教授 釣島 平三郎氏

タイトル:日米における事業経営の視点

1.講師紹介
・1942年兵庫県生まれ。 1965年慶應義塾大学商学部卒業後、ミノルタ(現コニカミノルタ)に37年間勤務。17年間のアメリカ駐在員中に、現地法人2社(ニューヨーク州での現地生産Minolta Advance Technology社、シリコンバレーでのMinolta System Lab社)を立ち上げ、社長として経営に携わる。2003年太成学院大学経営学部教授就任

2.講演のポイント
 日本的経営の特徴を農耕民族的、アメリカ的経営の特徴を狩猟民族的と位置づけ、各々の一長一短を説明する。そして、日本とアメリカの経営の基盤となっている思想的背景を歴史になぞって解き明かし、これまで優位だった西欧思想から21世紀は東洋思想が見直される時代が来ると予見した上で、古代から現代に至るまで荒削りな外来の文化や思想を自分たちに合ったものに磨き上げて取り入れてきた日本こそが、これからの世界に通用する新しい経営のあり方を提案できるとする。

3.講義内容
■世界を代表する2つの経営モデルの制度疲労
・今、世界を見渡すと、経営モデルが大きくは2つある。1つは、欧米の森林地帯を日々の獲物を狩りながら移住し、その日暮らしをしながら、いざとなればリーダーシップを発揮して好戦的な行動をとる狩猟民族的な経営モデル(その代表はアメリカ)であり、もう1つは、アジアモンスーンの農耕地帯に定住し、1年単位という長い時間をかけ、お互いに協力しながら作物を作る農耕民族的な経営モデル(その代表は日本)である。現在、有力なのは、アメリカ型の経営モデルである。
●アメリカ的な経営の抱える問題
・資本家(株主)は、社長(猟犬)を使い、できる限り少ない投下資本(弓矢)で、できる限り多くの配当(獲物)を得ようとする。そのため、短期間で儲けることを求め、研究開発や内部留保にお金を回す余裕が会社に無くなり、会社が弱体化する傾向が顕著になった。この考え方の代表的なものに、汗を流さず短期でお金を稼ごうとする金融経済重視の風潮がある。本来、金融経済は、実物経済(商品やサービスの生産)を後押しするものなのに、自らが一人歩きし利益を上げようとして今回のような金融恐慌を引き起こしてしまい、尚且つ社会の富を増やすことも無かった。そして、こういった破壊的な成長は、格差社会や猛烈な競争によるサラリーマンのストレスを生んできた。言い換えれば、弱肉強食の、合理主義的で、倫理観の欠如した経営といえる。
●日本的な経営の抱える問題
・日本的経営の特徴は一番遅い人に合わせ落ちこぼれを出さない護送船団方式にあり、これは効率や利益率が悪く、国際競争に負ける。現在、利益率はアメリカ企業の3分の1である。また、日本の製造企業が世界的にも優れた経営を実施できるようになったことで、これまで先例としてきた欧米のモデルが意味を持たなくなり、新たなモデルを見出せない状況になっている。更に、日本は1500年も侵略を受けず、安定した国民相互の信頼関係にあるが、そのような国は世界的に見てほとんど存在しない。「以心伝心」の言葉に代表されるような論理性に欠ける島国での日本的経営は、他国民になかなか理解されない弱みがある。

■日本的経営の原点と戦後の製造業躍進の原動力
・明治20年アメリカ留学から帰ってきた武藤山治の職場であった鐘紡における人本主義経営に日本的経営の原点がある。その特徴は、アメリカのコーポレートの良さを熟知した上で、製品の品質向上と社員への福利厚生や教育への投資とは相関関係にあるとしたことである。そして、彼は、役員や投資家の反対を押し切り、共済制度、年金、診療所、学校などの設立に取り組み、その結果社員の士気が上がり、大正9年から昭和にかけて売上高が当時の日本企業の中で上位3位以内に入る大会社に育て、世界的な評価も受けた。
 また、日本の製造業が中国などの追い上げにあいながらも、いまだ世界をリードしているのは、敗戦後の1950年にアメリカから招聘したデミング博士から学んだ統計的品質管理を導入したことにある。多能工の労働者と経営トップが一体となり、現場での仕事の改善や不良品撲滅の提案を通じて、高品質な製品を作り続けてきた。
 私たちは、これら日本的経営の真髄を決して忘れてはならない。

■日本から世界に発信するニューグローバルスタンダード経営のあり方への模索
・私たち日本人の先輩たちは、日本人の繊細さや器用さを駆使して、飛鳥時代以来中国や朝鮮半島からの大陸の文化や思想、明治期の資本主義思想や戦後の民主主義思想に手を加え、自分達にあったものに作り変えてきた。その中には世界に通用する文学や食文化と共に日本的経営やものづくりがある。こういった歴史を持つ日本こそが、まだまだ粗野で問題の多いグローバルスタンダード経営を、世界の多くの人々が幸福になるニューグローバルスタンダード経営に磨き上げていかねばならない、と考えている。その際、重要なことは、デカルト以来の西欧合理主義に基づくアメリカ的な経営の明晰さ(長所)を徹底的に学習した上で、これまで十分に注目してこなかった東洋哲学、日本の芸術文化や精神文化、仏教や儒教思想の特徴を、アメリカ的経営と擦り合わせながら、ニューグローバルスタンダード経営の基本にしっかりと取り入れ、世界に通用するものに仕上げていくことである。

■感想
・日米の経営の視点の違いを、比較文化論や西欧思想と東洋思想の特徴、あるいは外来文化を日本人にあったものにアレンジし続けてきた日本の歴史にまで言及して説明され、実は経営は手法やその理論のみを学ぶだけではなく、もっとより深く幅広く理解されるべきものであることを知るいい機会になりました。また、このことによって、アントレプレナー分野を専攻する者にとって、今後の探求の内容や方向性のひとつを指し示していただいたと思います。

以上

文責:辻本侑介、河坂昌利

 

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