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大阪市立大学大学院 創造都市研科

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2009年度(2009.4~2010.3) ワークショップ講演

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■第8回ワークショップ(2009年6月4日開催)

●ゲストスピーカー:株式会社あさひ 代表取締役社長 下田 進 氏


タイトル:創業からの考え方

1. 講師紹介
1948年大阪府に三人兄弟の三男として生まれる。1966年府立旭高校卒、玩具卸の仲村商店に入社。1975年、現在の会社の前身である「株式会社旭玩具」を設立し、取締役就任。1992年、現在の「株式会社あさひ」に商号を変更、父親の後を継ぎ、社長に就任する。
2004年ジャスダック上場、2007年東証1部上場。

2. アジェンダ
 超優良企業、(株)あさひの設立者であり、現在も社長として御活躍中の下田社長が、経営に対する思いやこだわりについて「創業からの考え方」というテーマで語って頂いた内容。起業を目指すアントレ7期生への熱いエールも。

3. 講演内容
1、あさひの歴史
(1)苦難の日々、そして自転車の道へ
 学生時代は、学校での勉学を好まず、早く実社会に出たい気持ちで生活を送る。
 22歳の時、父親が3人兄弟それぞれに与えてくれた玩具屋を運営。大手量販店の影響で来る日も来る日もお客がほぼゼロの連続で、3年間その状況は改善されず、玩具業を断念。当時地元近隣の堺は自転車産業が地場産業となっており、商売として馴染み易い環境があったことや、自転車なら売ったあとも修理等で店にやって来る人がいるのではとの考えから、自転車の道にすすむ。しかし実際は生きるためという厳しい現実もあった。
 早く技術を身につけたい一心で、閉店後に夜遅くまで、自転車の組み方から修理の仕方まで、血のにじむような努力に明け暮れた。恥をかいたことは沢山あったが、一つ一つ確実にクリアしていった。

(2)新たな展開
 12年間自転車屋を続け、店の運営は順調に推移。
 開業後はじめて、店舗を新天地の千里ニュータウンへ移転する。経験と自信を武器に当地においては、「自分のファン」づくりを目指すが、大手量販店の影響で思いとは裏腹に全く売上を上げることができなかった。試行錯誤の末、「プロショップ」に転業する事を考える。
 やがてプロ専用のパーツ販売や組み立ての専門店の中で日本一のレベルにまで成長。当時いつも心の中にあったのは「お客様第一主義」。
 その後、自転車レースの出場を機に、レース仕様の自転車の組み上げ方法を習得、その世界でも認められるようになる。様々な事を徹底して勉強し、自分のものとして習得していく背景には、設立の頃、知らないことで何度も恥をかいたが、それは一時の恥であって、その分努力すれば、その恥は生かされるという自分自身の信念からくるものである。

(3)自転車販売に対する疑問と真の顧客ニーズ
 1990年代初頭、巷ではスーパーなどで安価な自転車が大量に販売されていた。安さだけで、何のサービスもされずに売られている自転車に疑問を抱く。
 「本当にお客様のためになっているのか!?」
 自転車は、5年10年使ってもらうもの、だからしっかりした技術者がいないと顧客に迷惑がかかる。しっかりお客さまのニーズに答えたい。
 こうした経緯から、「お客様のあらゆる要望に答えられる自転車屋」をコンセプトに、2店舗目の店を出店。努力の末、無事軌道に乗せ、徐々に社員も増えていく。
 たくさんの人に支えられ、一人前になれたと思ったのは、自転車の商売をはじめてから20年が経った頃であった。

2、社長の思い
(1)お客様に対する思い
 一番大事にしていることは、お客様の数。お客様の数が増えるということは、自分達のファンが増えるということ。お客様が来てくれない小売業ほど、悲しいものはない。昔経験したその悲しさがあるからこそ、お客様第一主義でやっていく。
 お客様第一主義で、忙しい店にするためには、「YES(はい)から入ろう」です。「NO(いいえ)、できません」とは言わない。もし、できないことがあった場合,自分たちに足りないところがあるからと考える。
 今の「あさひ」があるのは、お客様の声に対して何とか答えたいという気持ちで、こつこつと知恵を使い、延々と努力をしてきたからである。

(2)創業に対する思い
 皆さん(アントレ7期のみなさん)にはぜひとも起業して頂き、成功して、ドキドキ、ワクワク感を味わってほしい。金ではないもっと充実した人生があります。
 世間では一般的に、「企業には理念が必要である」と言われるが、現実的には創業期は理念などを述べている暇はない。その日その日をお客さまに対し一生懸命集中していれば、創業期はあっという間に過ぎてしまうもの。
 借金はいいが、あくまでも自分の身の丈に応じたものであるべきである。
 起業の成功のカギは自分のやろうとしていることが社会にとって有用か無用かということ。有用であることは、成功する。創業はかっこつけることではない。どんどん失敗して、恥をかくように。

(3)これまでの人生とあるべき企業の姿
 充実した仕事人生であり、とても満足している。金がいくら儲かったかではなく、その仕事人生の中で何をしてきたかが重要。失敗、恥、勉強、努力...。いろいろなことを続けていくことが人生。
 会社の判断基準は儲かるか儲からないかではなく、いいか悪いか、それが正しいか、正しくないか?そうすれば間違いなく世の中に有用である続けられる会社になります。

4. 所感
 設立時から現在に至るまでの、自分自身の体験をつうじ、「お客様第一主義」を貫徹することへの強い思いや、いかに会社を運営していくべきかという事へのこだわり、商売に対する情熱、企業家としての粘り強さなどを熱く語って頂いた。
 その話は気迫に満ち、会社を一から起こし、一歩一歩努力をし続けた者だけが    語りうる“真実”の内容である。
 下田社長が、あさひの歴史について語られたのは、主にあさひという現在の社名に変更されるまでの、約20年間についてであった。現在全国に179店舗という巨大な店舗網を築きあげ、2009年2月期の決算は過去最高の増収増益決算となった今でも、設立期の血の滲むような苦労が凝縮された、しかし最高に夢に挑戦し続けた、20年という期間にあえてこだわってお話をされたのではないかと思う。
 そして、この20年間が社長自身の信念としてこだわり続ける、お客様に対する価値判断基準、つまり社会に対して、良いことか、悪いことか、また正しいことか、正しくないかという、企業を永続させるための最も大切なキーワードを体にしみこませる程の努力と苦労の期間であったということが、社長の一言一句から感じられる。
 下田社長の「充実した仕事人生であり、とても満足している」という言葉がとても印象的であった。
 アントレプレナーシップ研究の学生であるわれわれにとって、大いに参考となる話であった。下田社長さま本当にありがとうございました。

以上


文責:藤井、松田

 

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